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Study. 03
市場のゲートから新たなランドマークへ。
1959年築の扇形のモダニズム建築「新桜川ビル」

ビフォーアフター研究ビフォーアフター研究

劇的なコンバージョンを果たした施設や街を現地インタビュー取材・研究レポート。

研究発表

Study. 03
市場のゲートから新たなランドマークへ。1959年築の扇形のモダニズム建築「新桜川ビル」

Before After

撮影:増田好郎

第3回は、大阪府・なんばから一駅、桜川駅前にある2017年にリノベーションされた住宅兼商業施設の「新桜川ビル」をご紹介します。
リノベーション・オブ・ザ・イヤー2017総合グランプリを受賞、現在も空室待ちが続いている人気物件です。
 
なんと言っても、特徴的なのは「扇形」という変わった建物の形状、そしてどこを撮っても写真映えする魅力的な雰囲気。
「いい按配に」という言葉がピッタリの、最低限の施しで最大限建物の魅力を引き出されたリノベーションビルについてお話を伺ってきました。


研究発表 Index
1. 「新桜川ビル」とは?
2. インタビュー
3. 建物内のようす
4. 研究結果まとめ

今回の記事は、こんな人にオススメです。
・商業施設と住宅の複合ビルのリノベーションが気になる!
・関西のリノベーション会社の老舗「アートアンドクラフト」について知りたい!
・最低限のリノベーションで既存建物の魅力を最大限活かす、そのバランスを知りたい!

1. 「新桜川ビル」とは?

桜川駅周辺は、どこか懐かしい下町の雰囲気で溢れています

新桜川ビルは阪神電車桜川駅下車すぐの場所にあります

― ルーツは遡ること、秀吉の時代。

かつて、太閤秀吉の町割によって、大阪のまちに水平方向に長い町家群がつくられ、それは大阪の住まいの特徴になっていきました。
 
町家群は戦争を経て、木造2階建てから中高層の鉄筋コンクリート造の「併存住宅」に建てかえられました。「併存住宅」とは、下層階に土地所有者が経営する事務所や店舗、上層階に都市で働く人々のための賃貸住居がある建物です。
 
その一つが、今回ご紹介する1959年に建てられた「新桜川ビル」です。

「新桜川ビル」はその後さらに時を経て、2017年に時代に合わせた形で再生されました。
 
ここには、大阪らしい"おもしろさ"が今も続いています。


【施設概要】
施設名称 新桜川ビル
開業日(竣工) 2017年2月
駐車場・駐輪場 なし
URL https://www.a-crafts.co.jp/sakuragawa/
所在地 大阪市浪速区桜川3-2-1
アクセス Osaya Metro千日前線・阪神なんば線『桜川駅』徒歩1分/南海高野線『汐見橋駅』徒歩2分
階数 4階
従前用途:1階店舗、2階事務所、3・4階共同住宅
改装工事後用途:1階店舗、2階店舗(100平米以内)+事務所、3・4階共同住宅
敷地面積 576.33㎡
建築面積 292.72㎡
延床面積 1128.57㎡
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
事業主 丸二商事株式会社
建物所有者 丸二商事株式会社
企画・設計・施工 株式会社アートアンドクラフト

【既存建物基本情報】
用途 商業施設・住宅
築年 1959年
リノベーション箇所 全体
施工期間 2015年7月〜2017年2月(2期に分かれています)

2. インタビュー

今回は、「株式会社アートアンドクラフト」の広報担当・土中(どなか)さんにお話を聞かせていただきました。

新桜川ビル1階にあるコーヒーショップ「LEAD COFFEE(リードコーヒー)」にてお話を伺いました

それでは「新桜川ビル」が完成に至るまでの経緯や現在の運営、建物のようすを伺っていきます。

― 最初に、新桜川ビルのリノベーションを企画された、株式会社アートアンドクラフトさんについて教えてください。

弊社は、大阪・阪神間を中心に1998年から20年以上リノベーション事業を行っている会社です。
最初は個人住宅のリノベーションで、再販、つまりマンションの一室を買い取って私たちが欲しいと思うような住まいを提案していく、という形で始まりました。当初からすごくたくさんの方が物件を見に来てくださっていたのですが、その方たちから「これもいいけど、自分の暮らしに合わせた住まいが欲しい」という声をたくさんいただいたので、請負事業もはじまり、現在も続けております。
 
主に住宅部門がメインで、大阪と阪神間・沖縄で、マンションの一室から戸建てまで、お客様の住まいづくりをリノベーションの素材としての不動産の仲介から、設計、施工までワンストップでお手伝いできる、というのが弊社の強みです。
今となっては同様のスタイルで営業されているリノベーション会社さんも多いですが当時は多くなかったようです。
 
そして、そのうち不動産オーナーさんから不動産活用のご相談もいただくようになってきました。空きビルをどうしようか、空き家をどうしようかとご相談いただいた際に、それを賃貸物件としていかにリノベーションするか、というご提案をし企画から設計・施工までお手伝いしています。
 
 
さらに2011年から「大阪R不動産」という不動産紹介サイトも運営しており、このサイトを運営しはじめてからはお客さん付けまで当社でできるというところもメリットに感じていただけるようになりました。

大阪R不動産

私は大阪R不動産のスタッフとして不動産仲介と、事業用不動産のリノベーション企画を担当しています。ご相談いただいた時にどういう企画でどういうユーザーに向けていくらぐらいの賃料で募集できるので、いくら予算かけてやりましょう、といった事業の組み立てのところですね。
それでプロジェクトが進んでいくとなれば、社内の設計者とペアで進めていくという形です。その他広報なども担当しているのでたまに何屋かわからなくなりますが・・・(笑)

リノベーション前から使われていたビルの看板は立派な銘板だったので移設して活かされています。

― この場所でリノベーションをすることになったきっかけ、経緯を教えてください。

新桜川ビルは弊社の所有物ではなく、オーナーさまからリノベーションのご依頼をいただいた物件です。
 
実は、たまたま当社の代表がオーナーさまにご相談いただいく10年前ぐらいからこの建物を知っていたようで、おもしろい建物なので「もし将来リノベーションする時が来たらぜひうちで仕事させてもらいたい」と思っていたそうです。
そうしたら、ありがたいことに本当にたまたまオーナーさまからご相談いただいて、「ぜひとも!」という流れでした。
 
現在は、所有と建物の管理はオーナーさまがご自身でされていて、当社は入居者の入れ替わりがあったタイミングで仲介を行っています。賃貸なので管理組合はなく、オーナーさまが管理会社を兼ねられている形です。

― なぜ扇型で建てられたのでしょうか?

もともとは扇形の内側に市場があったそうで、市場の入口に建てられることになったのでゲート的な意味合いをもたせるために扇形になったのでは、と聞いています。

― リノベーションのコンセプトはなんでしょうか。

建物自体がすごく魅力的なので、上から新しさを付加する必要は全くない印象でした。
ただ、良さが埋もれてしまっている感じがあったので、もともとある魅力を引き出すことを根底に考えて、進めていきました。

扇形の新桜川ビルを一回り大きく丸く囲むように、作られた高速道路

― この場所でリノベーションをすることになったきっかけ、経緯を教えてください。

周りを囲むように阪神高速が通っていて、前にも大通りがあるので窓を開けると割と車の音がするんです。
住宅としては弱点でしたが逆にそれを活かして、室内である程度音を出してもらってもいいですよ、ということで、クリエイターが家で作業できる「アトリエ兼住居」という企画にしました。
実際、ミシンでお洋服をつくる方や彫金でアクセサリーをつくる方など、音を出しても大丈夫な場所を探していた方がお2人ぐらいいらっしゃいます。だいたいみなさん30代から40代ぐらいの方ですね。このような住居っぽくない雰囲気のビルが、ぴったり企画にハマったのだと考えています。
店舗の方も、このビルや桜川のまちを盛り上げていこうという思いがあって愛着を持ってくださる方だといいな、という思いがありましたが、実際そのような方に入っていただいております。

― 入居されたらみなさん長く住まわれていますか?

そうですね。リノベーションが完了したのが2016年頭なのでまだそれほど年月は経ってないですが、今のところ一室だけ入れ替わりがあったぐらいです。

― ビルオーナーさまが、容積率に余裕があるにも関わらず、建て替えでなくリノベーションすることに決めた理由はなんだったのでしょうか。

建て替えという可能性も検討されていたと思いますが、オーナーさん自身も「このビルがおもしろい建物だからできれば残していきたい」と考えていらっしゃいました。
ただどういう風にしたら入居者が入るようになるかアイデアが思い浮かばないという状態でご相談いただいて、それから私たちの提案に納得していただき進めることになりました。2階が6区画・1階が8区画ありますが、私たちがご相談いただいた時点では2階は全て空いている状況でした。

― 他の活用方法の可能性はあったのでしょうか。

もともと1階は店舗が入っていましたが、2階は全て事務所用途でした。ですが、店舗もできる方がニーズがあるだろうという提案をさせてもらい、今は2階の一部は店舗化しました。
だからまるっきり別の用途というのはなかったですね。逆に、それぐらいの変化で入居のニーズがあると考えていました。

― 施工が決まったあとはどのように進められましたか?

ご提案させていただいて、じゃあそのコンセプトでやっていきましょうとなった後は、建物の現状確認の調査をして、そこから詳細な工事金額の見積もりを出して、設計、着工という流れですね。
ご相談いただいてからだいたい1年ぐらい、入居者募集まですごく時間がかかるなどのトラブルは特になく、スムーズでした。
 
工事は1期と2期に分けました。1期では建物全体の修繕や2階共用部を手入れして、1,2階の入居募集をしました。そして全部決まってから3,4階の住居に着手しました。1,2階を募集した時に割と反響があり、いいテナントさんが集まってくださったので、オーナーさんにビルの可能性に自信を持っていただけたので、住居もやっていきましょうかという自然な流れで進めていくことができました。

― 入居の応募状況はどうでしたか?

大阪R不動産のホームページで募集しただけだったのですが、店舗も住居もすぐに入居者が決まり、集客に苦労することはありませんでした。

― 地域周辺との関わりはありましたか?

私達が関わった当初はあまりなかったのだと思います。
でも今は地元のお客さんが各店舗の常連になられていますし、クリエイターを育成する会社さんが入居されているんですけど、その方がここを起点に桜川のまちをおもしろくしていきたい、まちにアートを取り入れたいという思いで様々な活動されていたりと、入居された方がこのビルやまちのことを発信してくださっています。
当初はそこまで意図して私たちが計画していたわけではないのですが、結果的にそういう動きが出てきているのはすごくよかったと思います。
 
また、桜川はあまり治安がいいイメージがないかもしれないですが、難波や堀江からとても近いので最近少しずつ印象が変わりつつあるのかなと感じています。このビルの2階の「SAN」というレストランは若い女の子に人気で、インスタで広まったそうなのですが、今まで桜川にこなかった層のお客さまにもお店がきっかけでこのビルにお越しいただいているようです。

>> 「SAN」WEBサイト
>> 「SAN」Instagram

― リノベーションをしてよかったことはなんでしょうか。

工事業者・仲介業者としては、価値のある建物がなくなってしまわずに、今のニーズに合わせて生まれ変わったということがすごく良かったと思います。それを求めている方がいらっしゃったので、間違っていなかったのだと実感しています。

― リノベーション工事において想定外にお金がかかったことはありましたか?

最初に現地を拝見した時から割と傷んでいる印象があったのですが、実際に工事することになって詳細に状況調査をしてみると、ある程度予想はしていたものの、想像以上に傷んでしまっている部分もあり、改修費用が割とかかってしまったというのはありました。
具体的にいうと排水管やガス管の入れ替え、電気配線の整備などですね。人間で言ったら、血管を全部入れ替えるぐらいの工事でした(笑)

新しい配管

― 商業施設のリノベーションの面白さについて教えてください。

商業施設は、住居や事務所と違ってさまざまな人が来られる場所になりますので、それによって生まれ変わった建物がより多くの人に知ってもらえることや、より多くの人に愛される場所になるということが、商業施設ならではの魅力だと考えています。
また、リノベーション全般的にですが、今ではつくれないものや今ではできない仕上げを活かせるというのはありますね。
きっと、今この場所に何か建てるとなっても、絶対に扇形にはつくらないと思いますし!

― これまでのノウハウをどのように活かされましたか?

既存の魅力的な部分をできるだけ残すという発想自体が今までの経験から生まれたものです。また、技術的なところで言うと入居者さんがいらっしゃる中での工事だったので工事の段取りを工夫したり、共用部の配管だけ入れ替えて既存の入居者さんが退居される際にもまたそこにつなげれば簡単に更新できるなどの工夫はしました。

― リノベーション・オブ・ザ・イヤー2017(※1)総合グランプリを受賞されましたね。

できるだけ過度な投資をせず、できるだけ一番いい塩梅で、でも必要な修繕はしている、というところ、そして先ほどのコンセプトでもある既存のものをできる限り活かしていることを評価していただきました。文化財になるような建築物ではなくても歴史的に価値のあるビルにスポットをあてた、ということも評価ポイントでした。受賞を通して、業界の方からのこのビルの知名度が上がったと思います。その翌年に大阪市のハウジングデザイン賞(※2)も受賞しまして、そちらも世間の方から評価いただきました。
業界の方、有識者の方、審査員の方、大学の先生方に評価していただけたことは、オーナーさまにとっても誇らしいことですし、より物件を大事にしようという思いにつながるのではと思っています。

3. 建物内のようす

新桜川ビルは現在、1階は居酒屋やコーヒーショップなどが8店舗、2階には写真スタジオ・飲食店などが6店舗が入居。

おしゃれな写真スタジオやカフェレストランなど、リノベーションがはまって新しく入居されたテナントと、一方でリノベーション前から引き続き営業されている居酒屋「がばちょ」など新旧さまざまなお店が混在している感じが絶妙でおもしろい。

続いて、工事前のBEFOREと現在のAFTERの様子を含めて、施設の中の写真をご紹介します。

画像ギャラリー

当時はあまり既成品がない時代だったので、建物に合わせてオリジナルで照明や装飾が作られていました。1つ1つのパーツが丁寧にデザインされていて、今だったらわざわざつくらないだろうというものが多く、その辺に価値を感じていました。

画像ギャラリー

― 最後に、今後の課題や展望はありますか?

ありがたいことに課題は特にありませんが、これからも引き続き、価値のあるモダニズム建築として注目される建物であってほしいと思います。

以上、株式会社アートアンドクラフトの土中さんにご案内いただきました。
貴重なお話をありがとうございました!

4. 研究結果まとめ

研究結果まとめ

 
2017年にリノベーションが完成したばかりということでしたが、変に真新しいところは一切なく、当時の趣や空気感がそのまま残されていると感じました。例えば、一つ一つこだわって作られたオリジナルの照明器具やポストが手入れをして当時のまま使われていたり、残された重厚感がある手のこんだ窓やサッシがあったり、「残せるものはできる限りそのまま残す」というアートアンドクラフトさんの価値のある建物への敬意や心意気が伝わってくる、魅力的な建物でした。
どこまで残してどこまで新しくするか、というのはリノベーションの最大の難しさであり、醍醐味ですが、それを建物全体から感じられました。
扇形の内側に昔は市場があったんだな、とかこの照明は当時からこのビルを明るく照らしていたんだな、と気づけば思いを馳せてしまいます。
商業施設と住居が一体になっている施設という面では、入居されているお店のみなさんが単にこの場所を借りているだけではなく、新桜川ビルのことをすごく大切にしながらお店を運営されていることが伝わってきて、魅力的な場所には自然と魅力的な人やお店が集まってきて、集まった人がその場所を守り、また価値を高めていくのだと学ぶことができました。


【施設概要】
施設名称 新桜川ビル
開業日(竣工) 2017年2月
駐車場・駐輪場 なし
URL https://www.a-crafts.co.jp/sakuragawa/
所在地 大阪市浪速区桜川3-2-1
アクセス Osaya Metro千日前線・阪神なんば線『桜川駅』徒歩1分/南海高野線『汐見橋駅』徒歩2分
階数 4階
従前用途:1階店舗、2階事務所、3・4階共同住宅
改装工事後用途:1階店舗、2階店舗(100平米以内)+事務所、3・4階共同住宅
敷地面積 576.33㎡
建築面積 292.72㎡
延床面積 1128.57㎡
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
事業主 丸二商事株式会社
建物所有者 丸二商事株式会社
企画・設計・施工 株式会社アートアンドクラフト

【既存建物基本情報】
用途 商業施設・住宅
築年 1959年
リノベーション箇所 全体
施工期間 2015年7月〜2017年2月(2期に分かれています)

この研究科
の講義・研究テーマ一覧

  

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  • #リノベーション
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