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「なぜ今リノベーションが注目されるのか」
講師:島原万丈[LIFULL HOME’S総研]

不動産ゼミナール不動産ゼミナール

住宅や建築の専門家、アナリスト、住宅販売のプロなどを
特別講師に迎え、まちづくりやリノベーションの”イマ”を研究。

特別講義

Theme. 01
「なぜ今リノベーションが注目されるのか」
講師:島原万丈[LIFULL HOME’S総研]

特別講師:島原万丈(Manjo SHIMAHARA) / LIFULL HOME'S総研 所長
1989年株式会社リクルート入社。2005年より リクルート住宅総研。2013年3月リクルートを退社、同年7月株式会社ネクスト(現LIFULL)でHOME’S総研(現LIFULL HOME’S総研)所長に就任。他に一般社団法人リノベーション住宅推進協議会(現リノベーション協議会)設立発起人、国交省「中古住宅・リフォームトータルプラン」検討委員など。


特別講義 Index
1. リノベーションとは何か
2. リノベーションの歴史
3. リノベーションの今
4. 今後のリノベーション

今回の記事は、こんな人にオススメです。
・リノベーションってそもそも何?
・リノベーションの「今」が知りたい
・今後のリノベーション事情が気になる

1. リノベーションとは何か

― 早速ですがそもそもリノベーションとは何か、教えていただけますでしょうか。

一言で言うと、「建物の改修をして、新しい価値を創り出すこと」です。
リフォームとリノベーションの違いについてよく聞かれることがありますが、リフォームは機能を回復する・傷んだものを現状回復すると言う意味合いが強く、用途を変えていく、作り変えることをリノベーションと言ったりしていました。

ですが、今となってはどちらでもいいと思っています。
例えば、改修工事をしなくてもインテリアや使い方のルールを変えるだけでその場所に新しい価値が生まれるなら、それをリノベーションと言ってもいいんじゃないかと。する人が自由に表現したらいいと考えています。

2. リノベーションの歴史

― リノベーションの歴史を教えてください。

住宅の改修ビジネスはリノベーションではなくリフォームという言葉から始まりました。1975年に京都で全国初の増改築専業の会社ができてから、大手ハウスメーカーや中小工務店がリフォームに乗り出し、全国に広がっていきました。こちらは補修(リペア)の意図が強いものです。

その後、全く別の流れでリノベーションの動きがはじまります。
1990年代前半に東京・裏原宿のファッション界隈で自然発生的に始まり、東京都心部の広範囲な「ストリート」に広がり、やがて、住宅やビル、学校などバリエーションも数も増えていく中で、若い建築家がリノベーションシーンで活躍するようになりました。

2000年代に入り大きな影響を及ぼしたのは「R-プロジェクト」です。
東京の中心からやや東側にある、かつて繊維を中心とした問屋街として発展してきた神田、馬喰町や東日本橋のエリアを「セントラル・イースト・東京(略して、CET(セット))」と言い、古いビルや問屋街を地元の不動産オーナーたちの協力を得て、まち全体を使ってアートイベントが開催されました。それをきっかけに、まち中にリノベーションしたギャラリーやアトリエ、雑貨屋やカフェなどが続々と増えていきました。

馬喰町(ばくろちょう)

「R-プロジェクト」をきっかけにファンドマネーが東京や大阪の遊休化した古ビルに流れ込み、リノベーションやコンバージョンが一気に広がります。ところが、2008年にリーマンショックが起こり、不動産業界は大きな痛手を受けました。ファンド系のプロジェクトが全面的に退場する中で生き残ったのは、個人客の住宅に軸を置くリノベーション事業者や設計事務所でした。
 
個人住宅のリノベーションビジネスを最初に初めたのは、今やリノベーション会社の老舗と言われる大阪の「株式会社アートアンドクラフト」と東京の「株式会社ブルースタジオ」です。2000年を挟んで創業されたこの2社が火付け役となり、現在につながるリノベーション住宅ビジネスが始まりました。
個人住宅のリノベーションは、2009年に一般社団法人リノベーション住宅推進協議会が立ち上がったことで、住宅系メディアにおけるリノベーションの露出が急激に増加し、一般の雑誌やテレビなどでも取り上げられることが増え、いよいよ存在感を強くしてきました。
というのが、日本のリノベーションの大まかな歴史です。

― 日本でリノベーションが増加している理由を教えてください。

先ほどお伝えした流れを踏まえて、この数年、日本の住宅市場において「中古物件を買ってリノベーションする」という方法が急速に広がっています。リノベーションという方法が出始めたころは、ニッチな先端的市場と思われていましたが、今は本格的に拡大成長期に突入しています。
一言でまとめると、今「フローからストックへ」という大きな構造的な転換期にあるからです。
大きな要因が二つあります。
一つ目は、これまで大量に作られてきた住宅が、人口減・さらなる新築の増加により、急激に空き家が増加していること。
二つ目は、働き方の変化で雇用が流動的で不安定になり、長期的に安定した雇用や右肩上がりの収入が期待できなくなっており、一次所得層の30-40代男性の年収減少に伴い、住まいに大きなお金をかけられなくなっていること。
以上の二つの事情が「中古物件を買ってリノベーションをする」という選択肢をより強めています。なので、これまで培われてきたストックを活用して豊かさを作り出す戦略が必要になっているんです。

― 日本の住宅の問題点はなんでしょうか?

日本の住宅事情は世界でも特徴的で、圧倒的に新築に依存しています。皆が新しい家を求めてきたので、築年数が古くなると価値が落ちてしまいます。築20年で木造一戸建ての建物評価額はほぼゼロになりマンションなら半額程度になる。先進国ではこんな国はありません。また、取り壊された住宅の平均築年数を欧米と比較すると、日本27年・米国67年・英国81年と、日本の住宅の短命さがわかります。新築を建てて売る産業からみれば都合がよいのですが、消費者にとって理不尽な市場が成り立っていたのです。
 
もうひとつ付け加えるなら、「住み替え」の回数が少ないことです。
2012年の統計によると欧米では日本に比べて2〜3倍の住み替えが起こっており、日本人が圧倒的に住み替えの回数が少ないことがわかっています。なぜそうなったかというと、「一生に1回の買い物」と永住型プランの新築住宅を広告して、販売することが主流だったからです。しかし一生に一回の買い物では、人口減少の影響で市場は縮小するほかありません。しかし、住み替えすることが前提のストック型市場に転換することができれば、持ち家の売買市場は人口減少の中でも2倍以上に拡大する余地があると言えます。

参考:上記については、「STOCK&RENOVATION2014」
https://www.homes.co.jp/souken/report/201406/)に詳しく掲載されています。

― そのなかで中古住宅をリノベーションすることを選択する人が増えてきた背景はなんでしょうか。

共働きが一般的になったこともあって、不動産市場では立地の重視度が上がっています。しかし、2000年代初頭に比べると新築マンションの供給は半減していますし、東京23区の新築マンションの価格は平均で7,000万円超という時代ですから、普通のサラリーマンの方の所得ではなかなか手が出ませんよね。
 
そこで、利便性のよい場所の中古住宅を買って、現代の消費者ニーズに合致するように性能・機能・間取りもデザインも今時の水準に引き上げ、気持ち良く安心して暮らせる住宅に再生する方法が脚光を浴びています。古着やユーズド品など古いものの価値を認める消費者の意識の変化も、この流れを支持しています。

DIYする人が増えている(イメージ)

かつて日本の風潮は「新築でなければいけない」という人が多かったですが、新築マンションの供給が減少していること、出てきても価格が高いこと、利便性の良い立地には既に中古マンションが存在していることを現実的に考えると、中古物件を買うことが最初から選択肢に入ってくるということです。

また、リノベーションは空間づくりの自由度が高いことも、人気の理由でしょう。
例えば、新築では2LDKや3LDKなどと表現される空間が作られますが、リノベーションでは「◯LDK」では表現できない物件が増えています。つまり、それぞれの暮らし方に合わせた空間の使い方を追求した結果、そういう概念で表現できない、型にはまらない住宅が可能になっているんです。
例えば、部屋の間仕切りをなくして広いワンルームにしたり、壁ではなく本棚だったり、土間や小上がりがある空間だったり。既存建物の制約を受け入れつつ別の空間につくり変えるというのは、新築よりもクリエイティブです。

岡山県 問屋町(といやちょう)

― 新しい動きはありますか?

かつては個人のアーティストや建築家などが取り組む小さな動きから始まったリノベーションですが、2000年はじめごろから20年ほど経ち、今やそうそうたる大企業もリノベーション事業に参入しています。
三井不動産や三菱地所といった大手デベロッパーが中小の古ビルのリノベーションにも取り組み始めているんです。

また、もう一つの流れとして「DIY」が広まって、いろいろなことを自分でやる人が増えているということが挙げられます。簡単に作れるDIY商品もたくさん販売されていますし、予算も抑えられること、自分好みにできること、そしてなにより楽しいですからね!

弊社もかつて最新鋭のビルに入居していたことがありますが、便利だし快適でいいんですけど、つるっとしていて味気ない空間がだんだん居心地が悪く感じてきました。
今は築50年ほどの古いビルをリノベーションしたオフィスに移転しましたが、機能的にも問題はないし、居心地はこちらのほうがいいですね。

もちろん人によると思いますが、昔の表情を残し、ざっくりした風合いは、私たちが生き物として生きやすさを感じ、新しいものよりも居心地がいいんです。昔ながらの喫茶店の方が落ち着くという方も多いのではないでしょうか。

古いビルをリノベーションしてオフィスを移転されました。

3. リノベーションの今

― 島原さんが立ち上げられた「一般社団法人リノベーション住宅推進協議会(現・リノベーション協議会)」とはどんな団体でしょうか?

「リノベーションによる既存住宅流通の活性化」を目的に、2009年にインテリックス、ブルースタジオ、リビタなどリノベーション住宅市場のリーダー的企業が中心となって立ち上げた日本で初めてのリノベーション業界団体です。

はじめは東京で100社ぐらいで立ち上げましたが、今では全国で1,000社ほどになりました。参加企業の大きさは大小様々で北海道・東北から九州まで全国に広がっています。特徴としては不動産産業、建設業、設計事務所、ディベロッパーなど既存の業界の枠組みを横断していることです。

具体的には、消費者向けのイベントや、リノベーション・オブ・ザ・イヤーというコンテストなどを中心的な活動として、世の中にリノベーションをアピールすることを目的としてやっています。
私は会員企業には、協議会の究極の目的はこの団体の解散だと言っているんです。会員企業には協議会が定めた品質基準を守るよう促したり、リノベーションを普及させるために国交省の政策にも協力をしていますが、そもそもそういうことをしなくてもリノベーションが当たり前になるのが理想なのです。

― ここ1,2年のリノベーション業界の変化、広がり、動きで興味深いと感じるところはありますか?

リノベーション・オブ・ザ・イヤーからみえる最近のトレンドは、見た目がおしゃれであるだけではなく、省エネ性能の向上や、あるいは地域の社会課題を解決する・社会性が高いことが評価されています。例えばコミュニティの再生などです。
オブ・ザ・イヤーは、メディアの人間が審査員として選んでいますが、即ちそれは社会がリノベーションに何を期待しているかを反映していると思っています。

もうひとつ面白い動きは、リノベーションによるまちづくりでしょう。リノベーションによって新しいコンテンツや人が増えることで、エリアの価値を高めることにつながります。岡山県の問屋町(といやちょう)では、リノベーションで生まれたおしゃれなカフェやショップが、小さい点が広がって面になるように、エリア全体を盛り上げています。

ここ数年、中心的かつ代表的な存在としてリノベーションまちづくりの流れをつくってきたのは、リノベーションスクールです。2011年に北九州市が主催する形で始まり、全国から集った受講生が4日間で市内の遊休不動産を対象にリノベーションによる再生プランを練り上げ、オーナーに発表するというもの。講師陣はリノベーション業界の第一線で活躍する実務家が派遣されていて、2018年までに13回開催されました。リノベーションスクールを起点にしたリノベーションまちづくりは、今では全国に広がっています。

今私が個人的に注目しているのは、静岡県の「用宗(もちむね)」です。
静岡市にある漁港の小さな街なのですが、リノベーションスクールとは関係なく、民間企業が単独でまちのリノベーションを展開して、観光で地域を活性化しようとしているんです。このようにリノベーションでまちづくりを促すという例が、今後全国的に広がっていきそうだと考えています。

リノベーション・スクール実施風景

4.今後のリノベーション

― 今後リノベーションはどうなっていくと思われますか?

今後リノベーションはもっともっと一般的になっていきます。

今後の日本の住宅市場は、本当に必要な場所に必要な量だけ、新築である必要があるものだけが新築され、それ以外は中古物件をリノベーション、リフォームして回していく、というのが主流となっていくべきだと考えています。すでに社会問題になっている空き家問題についても、このままのペースで新築の供給が続くと人口減に伴い空き家が増えていく一方です。

そのためにはまず新築を建てるためのハードルを高めていく必要があります。
例えば、耐震性や断熱性の最低基準を今以上に高めることや、災害の多いところには作らないなどルールを厳しくしていくと、無軌道な新築は自然と抑制されますよね。
多くの人は新築住宅は性能が良いと思い込んでいますが、例えば基本的な耐震性能は1981年の基準から進化していませんし、1999年の断熱性能の基準すら満たしていない住宅が普通に作られています。

それと同時に、中古住宅の価値が正当に評価される必要があります。築年数とともに自動的に価値がなくなってしまう現在の中古不動産市場を、一つ一つの建物の性能や品質をきちんと評価する仕組みに変えていかなければなりません。その時、リノベーション事業者にはおしゃれな空間づくりだけではなく、性能向上の知識や技術が求められるようになります。

― 最後に、島原さんの「住まいの幸福」について聞かせていただけますか。

昨年2018年に私が書いたレポートで、持ち家を所有すること、賃貸で暮らすこと、新築を選ぶこと、中古を選ぶこと、戸建とマンション、どれを選択しても住まいの幸福度(満足度)に対してはそれほど違いがないことを、明らかにしました。(「RETHINK 住宅幸福論」より)

住まいはもっと自由であっていいんです。
平成は終わり、次に来る時代の流れの中で、「住むこと」と「生きること」は限りなく重なろうとしています。日本人の住まい観と、それを提供する住宅産業の間の古くからの慣例が解体される準備が出来たのではないかと思っています。
私たちは引き続き、「住まいの幸福」をテーマに議論を重ねていきたいと思っています。


島原さま、ありがとうございました!

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