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Theme. 03
「暮らしを編集」
後編~「ブルースタジオの暮らしの編集術」の具体例~
講師:石井健[ブルースタジオ]

不動産ゼミナール不動産ゼミナール

住宅や建築の専門家、アナリスト、住宅販売のプロなどを
特別講師に迎え、まちづくりやリノベーションの”イマ”を研究。

特別講義

Theme. 03
「暮らしを編集」
後編~「ブルースタジオの暮らしの編集術」の具体例~
講師:石井健[ブルースタジオ]

特別講師:石井健 (Takeshi ISHII) / 「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。日本のリノベーション・シーンを創成期から牽引。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「丘の上の大きな家 [HOWS Renovation 横浜荏田北の家]」(2018年)、設備ユニット「LIFE CORE](2018年)をふくめ、4回グッドデザイン賞を受賞。著書に『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。

今回は株式会社ブルースタジオ(http://www.bluestudio.jp/)の事務所に伺いました。


【ブルースタジオとは?】
ブルースタジオはデザイン会社として1998年に創立し、リノベーション業界のパイオニアであり続ける一級建築設計事務所。日本におけるリノベーションの黎明期より活動し、これまでに1800以上のプロジェクトを手がけてきた。
「物件から物語へ」を使命に掲げ、建築デザインを起点とするクリエイティブ・ディレクションを通して、驚きや美しさ、実用性と持続性を兼ね備えたひとつの「物語」へと編み上げていく。

ブルースタジオの大きな魅力は、「暮らしを編集」することで理想にぴったり合う住まいをつくれること。ということで、「暮らしを編集」するというのは一体どういうことなのか?じっくりお話を伺ってきました。
 
前編では「暮らしを編集する」ことについて
後編では「ブルースタジオの暮らしの編集術」の具体例をご紹介します。


特別講義 Index(後編)
1. リノベーションの具体事例 個人邸編
2. リノベーションの具体事例 団地編
3. 石井さんにとってリノベーションの醍醐味

今回の記事は、こんな人にオススメです。
・中古物件を買って、リノベーションをやってみたい
・ブルースタジオの家づくりについて詳しく知りたい
・具体的なリノベーション事例を知りたい

1. リノベーションの具体事例 個人邸編

― 前回はコンセプトづくりが大切だというお話を聞かせていただきましたが、特にコンセプトづくりに関して、今までに興味深かった具体例を教えてください。

▷すべての間仕切りが本棚?「パラレルワールド」なリノベーション

ブルースタジオ提供

Aさんはご夫婦とお子さん2人の4人家族。
 
購入された中古物件は割と築年数が長く、個室を作ることが最大の贅沢だと言われていた時代のお家でした。最近こんな家はあまりないですがLDKに窓がないんです。キッチンとダイニングが一緒になっている真っ暗なDKを通って、戸を開けると個室がある、というような形。そして部屋中にたくさん梁が横断していました。
 
Aさん一家は家族全員が本好き。本をたくさんお持ちなので、グリット状に本棚が並んでいるような家がいいとおっしゃっていました。また、奥さまはキッチンを中心に置いてコントロールタワーみたいに家の全部が見渡せる家をご希望でした。
 
そこで私たちは、2案作りました。
1つは梁に合わせて本棚がずらっと並んでいるような家。
もう1つはキッチンを中心に、波紋のような丸い形に広がっている家。
「どっちがいいですか?」と聞いたら「両方やりたい」って言われまして(笑)
 
ということで、2案を無理矢理ガシャってくっつけてみたら、意外とうまくいったんです。

ブルースタジオ提供

どういう家かというと、すべての間仕切りが本棚なんです。つまり仕切りが本棚なので何も入っていない状態だと仕切られていないけれど、自分たちの知の集積である本がたまっていくことによって部屋が仕切られていき、また相手との間に絶えず本があるという空間に育っていく。
また本棚なのにアスレチックみたいに遊ぶことができたりと、自由な発想で家づくりをしました。

ブルースタジオ提供

そして、家の中心に置かれる丸い形状のキッチンは、器具の配置や料理をする上でより操作性が良いということで最終的に「馬蹄形」になりました。

ブルースタジオ提供

ちなみにAさん夫婦は三鷹にある天命反転住宅(http://www.rdloftsmitaka.com/)を見にいくほど大の荒川修作(名古屋出身の美術家)好きで、天命住宅のキッチンが円形だったことも気に入っていただけた理由の一つでした。
 
さらにAさん夫婦はファミレスが一番仕事がはかどるとおっしゃっていたので、この家にはファミレスコーナーがあるんです(笑)これは実際にファミレスに行って調査をして、同じ寸法でつくりました。

ブルースタジオ提供

こちらはじっくり練って一緒に作っていった、複雑なコンセプトの事例ですね。

▷「昔の暮らし」を取り入れたマンションリノベーション

ブルースタジオ提供

続いて、Bさんご夫婦はご夫婦と子どもさんの3人家族で、50平米ぐらいの中古物件を購入されました。
 
Bさんからはちょっと狭いかもしれないという懸念と、忙しい中でもリズムある規則正しい生活をしたいという思いを聞かせてもらいました。
 
また、ご夫婦ともに民芸品好きだったことと、選んだ立地が世田谷線沿いの路面電車がある昭和っぽい香りが残っている場所だったので、「昔の暮らし」取り入れることを提案しました。
 
例えば、昔の長屋暮らしといえば、来客があれば玄関先で話をして、和室では寝るとき寝室、朝起きて布団を片付けてちゃぶ台を出すと食堂、子供たちが出かけてお母さんが内職を始めるとワークスペース、子供たちが帰ってくると勉強部屋、夕食時にはダイニングルーム、また夜に寝室に戻るというように、同じ一つの空間が1日を通して様々な用途で使われていました。
 
そういう暮らし方を現代風に取り入れてみました。

ブルースタジオ提供

結果、このご家族はどうなったかと言うと、朝起きたら布団を片付けないとごはんが食べられないわけですよ。そうするととりあえず家族みんなで布団を片付けるという行為が入るので、そこで「朝起きた」というリズムができます。
そして食事が出されて、朝食を食べて・・・と自然に生活の流れが生まれていく。
この流れを自分たちの生活リズムにしていこうという考え方でつくりました。
 
こうなると最終的に和室だけで生活が完結してしまうので、最初狭いかと思っていたのが、逆に他が全部余っているという、そういう感覚になるんですね。

ブルースタジオ提供

ただ、昔の生活に戻りたいわけではないので、ソファーがあったり、オープンキッチンにみんなが集まってお酒が飲むこともできます。そういった現代的な暮らしと昔の暮らしを組み合わせながら、さらに自分たちが抱えている問題点の解決と、なんとなく漠然と思い描いている理想の暮らしを全部ひっくるめて一つの空間にしています。
 
日本では中古物件を買ってリノベーションすることが世間に浸透してからまだ期間が浅いです。なので一見、欧米に比べて遅れているように見えるのですが、日本人はもともと違う文化のものを取り入れて、咀嚼して自分たちのものにしていくことが得意だと言われていますね。
リノベーションも同じように、新しいものを取り入れて自分の暮らしを柔軟に変えていくことが上手だと思います。

ブルースタジオ提供

上の2つの事例のようにじっくり時間をかけて一緒に考えていくこともありますし、もう少しプロセスを簡略化してコストをリーズナブルにしたり、プロセスをシンプルにして早く家づくりができたり、ややこしいことは求めていないという方へのシンプルなプランも提供しています。
 
要するに、コンセプトそのものが大事というよりも、家をつくる私たちとご依頼主との考えを共有することが一番大事なのです。

― すごくこだわられる方とサクッとしたい方を比べると、どのぐらいの期間の差がありますか?

進め方には色々なコースがありますので一概には言えませんが、一般的にマンションの場合はだいたい2ヶ月〜3ヶ月で着工することが多いです。最短だと3週間ぐらいで着工ができるような仕組みもあります。

― リノベーションしていく過程で特にしんどいところはなんでしょうか。

特にしんどいところは・・・古い中古物件で図面資料がないというのがよくある困ることですね。そうなると壊してみないとわからないですから!
 
残念ながらかつての日本の住宅は水準が低く作られているものも少なくありません。完了時の検査を受けていない状態であったり、できた時は合法だったけれど今は既存不適格のものもあれば、あとでいじって違法建築になっているものもあります。そういったものにもなんとか解決法を見つけたいけれど、是正ができない、あるいはコストが多大になるケースもあって、あきらめざるを得ないこともあります。
時には解体して新築する選択をする、可能な範囲で改善するということもありますが、そういったことはしんどいということではなく、それがまたリノベーションのおもしろさでもありますね。

ブルースタジオ提供

2. リノベーションの具体事例

団地編

― 個人邸の事例をご紹介いただきましたが、リノベーションの大規模プロジェクト具体例があれば教えてください。

▷「ホシノタニ団地」リノベーションプロジェクト

「ホシノタニ団地」(https://www.odakyu-fudosan.co.jp/sumai/mansion/hoshinotani/

 
「こどもたちの駅前広場」をテーマに築50年団地型社宅の再生
人と人、人と街がつながる 街にひらかれた賃貸住宅

 
小田急線座間駅前にある4棟の団地型住宅は、老朽化に伴い閉鎖している状況でした。本建物は駅前にも関わらず、建ぺい率にして約20%のゆとりある敷地内空き地を有します。自動車が乗り入れることの無いこの環境を「子どもたちが安全に遊べる駅前広場」、「みんなが集える街の広場」と捉え、団地住人だけでなく地域の人々にも開き交流の場所になることを目指して、建物及び外構を改修。隠れた街の文脈を発掘し、再編集するべく、地域の古刹をもとに「ホシノタニ団地」と命名。コンセプトビルディングから建築デザイン・プロモーションによって力強い物語を紡ぎ出しました。
 
2016年グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)受賞
2015年リノベーション・オブ・ザ・イヤー総合グランプリ受賞

小田急線 座間駅は、都心から1時間弱の急行通過駅。
その駅前ロータリーとプラットホームに隣接して、4棟の階段室型団地建物が建っていました。
土地建物の所有者は小田急電鉄。従前の用途は家族向けの社宅。
2011年の現地調査時において、4棟のうちの2棟は耐震強度に不安があることを理由に使用されておらず、敷地は鋼板の仮囲いに覆われていました。

プロジェクトがスタートする前の様子

“ネガティブな印象”は、使われ方次第で全く反対の”好印象”を強烈に打ち出すことができるということ。

私たちは、駅の目の前に団地があるという座間駅固有の状況を活かし、団地の豊かな外構部分を「みんなが集う駅前広場」と見立てました。特に団地の1階と外構は、公共に資する空間として積極的にまちに開きました。サポート付きの貸し菜園、ドッグラン、子どもたちが遊べる芝生のスペースなどを取り入れ、古くから住んでいらっしゃる旧住民と新しく移り住んできた人たちの交流が生まれるような場所をめざしました。実際に行くと駅前ということもあり、かなり変わった印象を受けると思います。

入居者は半数以上が都内から移住してきたカップルやファミリ−です。50平米という広さなので、こどもが生まれるまではホシノタニ団地に住んでもらい、その後は近くの戸建に引っ越してもらえればと思っています。

― 大規模プロジェクトの場合の周辺住民の理解や巻き込み方はどのようにされていますか。

大規模なプロジェクトについてはその都度状況は違います。ですが、大事なことは事業主・新住民・旧住民など立場の違う人々がいますが、わたしたちもこれらの様々な関係者に近い「当事者意識」を持つことです。
その人の立場に立って考えるというのは、人とコミュニケーション取る時の鉄則ですよね。
結果、事業者の(善意の)思いが(伝わること)が大事です。

メゾネット編

― そして、このリノマチコラボのスポンサー、関電不動産開発と大阪の箕面市で一緒に作った事例もありました。

▷「MINOHA TERRACE」プロジェクト

「MINOHA TERRACE」(http://es-minohaterrace.jp/

 
風光明媚な北摂山系に抱かれ、豊かな森と水に恵まれた地域、箕面(みのお)。山々から注がれたせせらぎに隣接し、清涼な風や心地よい水音が響く水際にミノハテラスはあります。
 
南にはかつて人々の往来を支え、歴史文化を蓄積してきた古西国街道。街道沿いの集落は宿場町としての面影を残し、今でも街の人々の生活を支えています。
人と自然、昔と今を繋ぐ。ミノハテラスはそんな共同住宅です。

ミノハテラスは、関西電力の築36年の社宅をリノベーションした、専有面積64㎡超のメゾネット型・ファミリー向けの賃貸住宅。2016年に完成しました。

南側の窓辺をウッドデッキと専用庭で仕上げ、住まいにも自然を取り込むようなつくりになっています。例えば、お部屋の床は岡山県西粟倉村産の杉の無垢材を使用し、裸足で過ごしたくなる空間です。

木を基調とした洗面所。玄関からお風呂場に直行できるなど“子育て世代”にやさしい家つくり

箕面の自然と町並みを一体化したランドスケープで、樹齢50年以上の既存樹(サクラ)をシンボルツリーとして残し住民の憩いの場になっているそう。

敷地内にはせせらぎの川床、住棟間の緑道、ベンチなどのんびり過ごせる空間があり、入居者のコミュニケーションを誘発する仕掛けがあふれています。

― ここ1,2年のリノベーション業界の変化、広がり、動きで興味深いと感じるところはありますか。

1つは、ワンストップで、おしゃれでコンセプチュアル(本質的)なことを提供するリノベーション業者さんが増えていることです。参入している会社もデザイン会社だけではなく、多くの不動産会社、また広告や集客を得意とするIT業界からの参入も目立ちます。おもしろいところだと保険屋さんがリノベーションのワンストップサービス始めて大成功しているところがあります。おそらくこれからもっともっと広がっていくと思います。
 
また今後は社会の動きに対して、ハイグレードな高価格帯のものから身近な低下価格帯のものなど、たくさんのサービスや商品が生まれてくると思います。
今までリノベーションといえば一旦スケルトンにして思いっきりやる!が主戦場でしたが、注目したいのは、「リノベーション=見た目のデザインや改修工事」ではなく、「暮らし方や家の使い方を考えるだけ」というようなメンタルシフトを中心とした「心のリノベーション」ではないでしょうか?

例えば、古くなったからトイレの便器を交換しようというような単純なことではなく、トイレという空間をどのような生活空間にしていくかをプロと一緒に考えていくケースや、自らDIYで自分の暮らしを改善していく人たちがどんどん増えていくと考えています。
 
つまりリノベーションが、今、世界的に広がっている、暮らし方改革、スローライフのあり方、オフグリッドな生活が人気を得ていることと連動していくのではないかと考えています。
 
もう一つは、断熱や省エネなどの機能面の改善ですね。
先日も住宅に対する省エネの義務化が見送られましたが、現代の日本の家は実は温熱環境の性能がよくなく、省エネに関して世界でのランキングは低水準なのです。
 
これから(特に戸建てリノベーションの場合)機能面が大きく改善されていくのではと考えています。

3. 石井さんにとってのリノベーションの醍醐味

― 石井さまにとってリノベーションの醍醐味はなんでしょうか。

特にリノベーションだからということではないですが、醍醐味は「何かが持続する喜び」ですね。「サステナビリティ(持続性)」を実際に自分の手で作り出すことが今までしにくかった、あるいはそういう価値がなかなか表面化してなかった時代が今まで長く続いていたと思うのです。
 
リノベーションという概念が、最初は建物を壊してかっこよく住もうとか、よりリーズナブルに自分の理想の暮らしを手に入れようといったフェーズから、だんだんとそれがまちに飛び出て行って、いろんなところでまちづくりや人々の暮らしを良くしようという動きに変わってきています。
 
ハコモノをつくったはいいけど誰も使わなくて結局それ何だったの?というようなサステナビリティがないようなまちの動きではなく、単に建築物が長持ちするということだけでもなく、継続していくことで暮らしや価値、習慣をもっと充実させていきたいという同じ思いを持った人が増えてきているということが、今のリノベーションの醍醐味だと思います。
 
それはたぶん僕だけではなくて、リノベーションに関わっている人たちの多くがそこに醍醐味を感じているような気がします。そのためにはせっかく購入した家の価格が下がらないような市場の形成、本質的に快適で健康に暮らせるような温熱環境の整備など、いろんな課題はあると思います。
今、日本もようやく成熟社会に入ってきたと言われている中で、「サステナビリティ」はみなさんにとって大事なテーマなんじゃないかなと思います。

― 石井さまご自身は今後リノベーション業界をどんな風にしていきたいという思いはありますか。

リノベーション業界といってもいろいろな人たちがいることが魅力ではありますが、まだそれぞれの僅かな立場、理想とビジネスの比重などによって認識の差があります。
 
もちろん全員が同じ意見である必要はまったくないですが、お互いが不健全な乖離を捨て、より大きな目標に向かって活動できるような環境にするにはまだまだ改善の余地があるんじゃないかと思います。
 
そのために、リノベーションに関わっている人たちがきちんとしたものをつくっていくこと、特に今ある既存ストックをどうしていくのかしっかり考えていくことが重要です。
 
一人一人が自分の暮らしを良くする、少しエネルギーを使わないようにしてみる、古いものが長持ちするようにすることによって、最終的に理想的な社会になっていくのかなと思っています。
 
 
 
石井さま、ありがとうございました!

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